勘三郎さま

今日5月30日は十八代中村勘三郎さんのお誕生日です。私が観たいくつかの舞台を振り返ってみたいと思います。

 

2005年3月に歌舞伎座で始まった襲名披露公演、5月の昼の部は下記の四演目

  • 車引
  • 芋堀長者
  • 弥栄芝居賑
  • 髪結新三

 勘三郎さんの出演は下の二つ。なので私の初勘三郎さんは『弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)』です。もともとは京都で始まった歌舞伎ですが、1624年江戸中橋に初代猿若勘三郎猿若座の櫓をあげたのが江戸歌舞伎の始まりです。勘三郎三代目からは中村勘三郎と名乗り、以降猿若座中村座となったそうです。

 この演目は舞台を芝居小屋に見立て、人気役者が揃いの衣装で襲名の祝いに駆け付けるというものです。通常は花道は下手側にしかないのですが、このときは上手側にも造られており、立役(男役)と女形に分かれてずらりと両側に並び、お祝いをするという豪華なものでした。

 この翌年6月がようやく博多座での襲名披露でした。私が観たのは夜の部、口上と『弁天小僧』の二つ。博多座で観た勘三郎さんはこの一度きりです。

 じつは2011年3月に、九州新幹線開業記念として出演が予定されていたのですが、ご病気のため休演となってしまいました。ですが代役を務められた勘九郎さん(当時はまだ勘太郎さんでしたが)の『夏祭浪花鑑』は素晴らしかったです。今後また観る機会もあるでしょうからここで詳しくは書きませんが。

 博多座のあと何度か歌舞伎座に行く機会がありました。印象に残っているのは改装前のさよなら公演、2010年4月の『助六』の通人里暁です。この役はわりと自由にアドリブも入れやすい役だとは思うのですが、勘三郎さんは特別でした。この日も客席の大爆笑を誘い、“しばしのお別れ”と言いながら花道を去っていく姿は今でも私の心に深く刻まれています。

 その翌年2011年11月には平成中村座に行くことができました。ご病気から復帰されての『お祭り』です。昔の芝居小屋を再現したような小さな中村座、その上その日はそれまでで一番舞台に近い席で観たということもあり、表情まではっきりと見えました。大向こうさんの“待ってました!”の声に涙を浮かべておられた姿がとても印象に残っています。

 

 勘三郎さんに導かれるように観始めた歌舞伎。今では私の人生に寄り添ってくれる大切なものとなりました。その楽しさが一人でも多くの人に伝わりますように。