歌舞伎の神様、それとも勘三郎様のお導き⁉

初めて歌舞伎を観たのは12年前、2005年5月20日のことでした。当時歌舞伎には全く興味はなく、観てみようと思ったこともなかったのに、なぜ歌舞伎を観ることになったのか、今思い返してもその理由はわかりません。

 

その朝私は宿泊していたホテルでの朝食を終えて部屋に戻り、届けられた新聞を手に取りました。夜に人と会う以外に特に予定もなかったので、映画でも見ようと映画欄を開いたはずです。

一つ目の不思議:映画欄のはずなのになぜかトップにあった“中村勘三郎襲名披露公演”の文字が目に飛び込んできました。そして気づいたときにはそこに載っていた番号に電話をかけていました。当時の私には歌舞伎に関する知識など何ひとつありません。

・開演が11時であること

・開演直前(おそらく1時間切っていたと思います)のチケットは電話では予約ができないこと

・前売り券はすべて完売していること

 などをその電話で初めて知り、おしえられたままわずかな可能性を求めて当日券を買いに急ぎました。

二つ目の不思議:それまで歌舞伎座を意識したことなどなかったのに、“たしかここから歩いて行けるはず“と思いながら、迷わずにどり着きました!

しかしチケット売り場には長蛇の列です。私までまわって来ないかもしれないと思いつつもとりあえず並びました。前方に並んでいる人が係員さんに、こんなに並んでいて買えるのか?というようなことを聞いていました。係員さんの“ほとんどの方が夜の部をご希望なので、お昼の部だったらあるかもしれません“という声が聞こえてきたので、そのまま並び続けました。並び始めたときすでにかなりの列が出来ていたので、私の後ろに並ぶ人はあまりいませんでした。

三つ目の不思議(というより奇跡かもしれません):どこからか女性の方の "どなたかチケット買っていただけませんか?"という声が聞こえてきました。その女性のもとへ行き詳しく尋ねると、"その日の昼の部のチケットを1枚持っているが、急用ができて観ることが出来なくなった"ということでした。こうして初めて手にした歌舞伎のチケットは3階B席・3500円でした。

じつは席も聞かずに譲っていただきたいと言ってしまったのですが、そのときの私は席の種類も金額も知りません。もしその方のチケットが1等席だったら、もしかしたらお断りしていたかもしれません。

 

以来何度も東京へ行き、新聞の映画欄を目にしますが、歌舞伎の公演情報を目にしたことはありません。きっと勘三郎さんに呼ばれたのだと信じています。

 

 

《歌舞伎のチケットについて》

 公演によって多少変わることがありますが

歌舞伎座の場合の一例として

 1等席(主に1階の大部分と2階の前方):18,000円

 2等席(1階後方と2階後方)     :14,000円

 3階A(3階前方と両サイド)     :  6,000円

    3階B(3階後方)          :  4,000円

 1階桟敷席(1階の両サイド)     :20,000円 

 これ以外に一幕見席というチケットがあります。通常歌舞伎は昼・夜それぞれ3~4演目上演されることが多いのですが、一演目だけを観ることができます。演目により1,000円~2,000円ぐらいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

祝!1000回

5月16日、昼の部は記念すべき市川猿之助さんの宙乗り1000回です。

演目が発表になったときから松竹座に行くことは決めていたのですが、1000回を迎えると知ってこの日に決めました。

記念の日だからでしょうか、昨夜に比べると着物の方がとても多かったです。

 

一つ目は『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』、初めて見る演目です。

幕が開くと一面菜の花と桜が満開の京都、ため息がでるような美しさ🌸

勘九郎さん、児太郎さん、歌昇さんの舞踊劇です。勘九郎さんの踊りは久しぶりに拝見します。お父様の勘三郎さんの襲名の際に観た『雨乞狐』に感動したことを思い出します。のちに勘三郎さんが“踊りは俺より上手い”とおっしゃっていたのも頷けました。

 

そして二つ目、いよいよ『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』です。

幕が開く前から客席の空気が違いました。きっと役者さんたちにも伝わったことと思います。

前半で際立つのは七之助さん演じる七綾姫の美しさ。頼光(勘九郎さん)を慕う清姫(猿之助さん)が、二人が恋仲と知り嫉妬する気持ちがよくわかります。やがて嫉妬に狂って蛇体となった清姫と、同じく二人に嫉妬し鬼となった忠文(猿之助さん)の霊が合体し、前半のクライマックス宙乗りを迎えます。

猿之助さんの足が舞台を離れた瞬間から割れんばかりの拍手と大向こうさんの声!それにこたえるように猿之助さんはゆっくりと客席全体を見渡してくれているようでした。

宙乗りで前半は幕となり休憩なのですが、会場の熱は冷めないまま後半の幕が開きました。

七綾姫と頼光の祝言の席に現れた白拍子、やがて清姫と忠文の怨霊となり七綾姫と頼光に襲い掛かります。そこへ退治に現れた藤太・歌昇さん。うれしいことに台詞のなかで1000回を祝ってくれました。もちろん客席は拍手喝采です!

幕が下りたあといつまでも手拍子が鳴りやみませんでしたが、残念ながらカーテンコールはなし。でも歌昇さんの台詞があったのでみんな大満足だったと思います。

 

飛行機の時間があったので、会場で余韻に浸る間もなく空港へ向かいましたが、行ってよかったと心から思える二日間でした。

 

 

初!松竹座

初めて大阪松竹座へ行きました。

戎橋から100mほどなのに、重厚感のあるエントランスは一気に非日常へといざなってくれます。何度も訪れている博多座歌舞伎座に比べると客席が狭いので、後方の席でも舞台が近く感じられます。

 

この日の演目、一つ目の『野崎村』は以前歌舞伎座で観て以来二度目ですが、前回と同じ七之助さんのお光です。前半の恋するお光がとてもかわいらしいので、余計に最後は悲しくなります。

二つ目は勘三郎さんで人気だった『怪談乳房榎』です。

残念ながら勘三郎さんで観ることは叶わなかったのですが、勘九郎さんのニューヨーク公演をテレビで見たことがあり、生で観るのを楽しみにしていました。

見どころはなんといっても勘九郎さんの三役早変わり、とくに花道での早変わりはテレビで何度見てもからくりがわかりません。

この演目を何度も観ている人の感想だと狭い松竹座だと早変わりのスピードが全体的に増すそうです。

ニューヨークで獅童さんが演じた悪人・磯貝浪江、色気があって獅童さんにぴったりだと感じていましたが、今回演じるのは猿之助さんです。

獅童さんのときは、七之助さん演じる美しい人妻・お関に一目惚れをしたことがすべての始まりという印象を受けたのですが、今回の浪江は先に悪ありき、浪江にとってお関は駒の一つでしかないように感じました。

どちらもそれぞれの良さがあって十分に楽しめました。これから何度でも観ていきたい演目の一つです。

初めて歌舞伎を見る方にもおすすめです!

 

 

 

 

2005年5月20日

はじめまして、まなです。

2005年5月20日に初めて歌舞伎を観てから12年になります。

おそらく人生の半分は過ぎたけれど、これからも可能な限り歌舞伎を観たい、そしてそれを記録として残しておきたくて突然ブログを思い立ちました。

仕組みもわからず、何の準備もしないままなので人の目に留まるようなものではないけれど、どうしても今日5月20日に始めたかったのです。

歌舞伎を中心にいろいろな舞台の感想、ときには旅のことなども書いていきたいと思います。